カタール

カタールと聞いてもピンと来る人は少ない。「ドーハの悲劇」「今年のワールドカップ開催国」といったイメージで、実際の足を運んだ日本人は少ないというか、ほとんどいないのではないか。商社に勤めていた知人からその発展ぶりを聞いていたので、是非とも自分自身の目で見るために立ち寄りしたいと考え、今回のロンドン行き航空券はドーハ(ハマス空港)経由のカタール航空便を手配した。残念ながら、コロナ禍のためカタールでのストップオーバーは叶わなかったが、航空機内と数時間のハマド空港の滞在で、その発展ぶりを垣間見ることができた。 ランキングトップのエアラインに恥じず、特に新しい機材で提供されるQSuiteは、素晴らしい。世界中の一流品のかき集めと揶揄する人もいるかもしれないが、底力を感じる。ラウンジのスケール、豪華さ、料理や酒、サービスのバリエーション、来訪者の多様性も必見。
中東のプレゼンスは20世紀後半から、エネルギーを梃子に大きく向上したが、実は地球レベルの地理でみれば、まさに中心なのである。カタール航空で渡航できる国は100を優に超える。この数は、日本航空の倍以上。地域的にも、ヨーロッパ、アジア、アフリカが圏内であることはもちろんのこと、北米、南米にまで直行便がある。しかも、この空港は24時間稼働し、真夜中でも多くの航空便が行き交っている。中東の空港に立ち寄りといつも感じることは、日本が極東だということ。確かに欧米の世界地図では一番の右端にある。
エネルギーによる大きな収益を元に、地の利を活かした交易、移民政策、巧みなビジネスアライアンス、ワールドカップ招致やサッカーチーム ParisSGへのスポンサーシップ、計画的な都市計画等々、金満の中にも強かさを感じる。事実、1人当たりの所得、GDPは日本をはるかに超えて、世界のトップグループ。この勢いは、止まりそうにない。興味深いことに、この天然ガス産出量トップクラスの国が、今や太陽光発電も始めとする再生可能エネルギーへの投資を進め、さらにエネルギー基盤を長期的な視野で固めている。賢い国家戦略だと感嘆する。原子力依存戦略から脱皮できないどこかの国とは大違いである。ロシアの蛮行が続く限り、地理的にもエネルギーにも恵まれた、中東の繁栄は続く。決して過大な評価でないないと思う。平均年齢が低く、活用できる十分を有するからこそ、柔軟な発想と圧倒的なスピードで成長できるのだろう。