ヨーロッパ視察旅行記 物価問題

日本でも報道されている通り、相当なインフレとなっているようで、物価も高い。所詮旅人なので、物価上昇のヒストリーを経験しているわけではないが、外食などについては絶対的に高く感じる。店を探す際にはGoogleマップで検索することになるが、そのサイトに以前投稿されたメニューと比較してみると、ここ1−2年で2−3割増といった感じだろうか。さらに最近の円安の影響もあって、日本からの訪問者にとっては相当のインパクトになる。庶民的な店でも、パスタ、フィッシュ&チップス、ハンバーガーの定番メニューでさえ15−20ポンド(税込、チップ込み)。さらにビールを1杯飲めば、5000円近くになる。ガソリンもリッター340円。
この辺りの情報は日本でも報道されているが、一方で食料品は意外に安い。免税、チップ無しということもあるが、地産地消品の食品も多く、1パックのボリュームを考えれば、意外にも日本より割安に感じる。地ビールも割安。また、解熱剤や抗原検査キットといった生活必需品も安価。現地に暮らしてみないと気づかないが、サービスコスト(人件費)やエネルギーコスト上昇のインパクトが大きい外食、グローバルサプライチェーンに依存する工業製品が物価上昇を引っ張っているのだろう。そう考えれば、スーパーで買った食料品で自炊し、公共交通機関を利用し、賃上げをうまく享受すれば、案外、この局面を乗り切れるかもしれない。確かに、バスも地下鉄も1回の料金は安くないが1日あたりの上限があって、良心的。バスに関して言えば、乗り換えも30分以内なら重複チャージされない。また、大英博物館、ナショナルギャラリーはじめ、国立のミュージアムは入場料無料。娯楽に関しても、例えばミュージカルの座席は、10種類近くのカテゴリーでピンキリの差は5倍以上。日本は、せいぜい3−4のランクで、その差も2倍程度。選択肢も多く、シートによっては、日本よりはるかに安く観劇できる。料金の差額ほど、実際の品質には差はないので、余裕のある人が余分に拠出し、余裕のない人への機会をもたらしているように感じる。国立ミュージーアムも無償だが、そこら中に寄付の受付カウンター(モバイル用無人)で、実際寄付をしている人も多い。
歴史的な階級社会の特性をうまく活用し、生活、文化の格差を拡大させず、むしろできる限り補完していこうという工夫が見て取れる。Noblesse obligeにも通じる社会的な仕組み、精神は、現代日本ではほとんど見かける機会がないので、結構清々しい。日本人は暗く不機嫌そうに見える一方、ヨーロッパの人々がそれほど悲観的に見えないのは、こういった社会文化が安心感を与えているのかもしれない。