納税の季節

5月は、最も快適な季節である。緑が色を増し、花が咲き、そこかしこで祭りで行われて、スポーツにも心地よい。一方で、納税者としては、あまり嬉しくない時期である。固定資産税、自動車税、住民税と矢継ぎ早に通知書が届く。税が社会の分配の有効な手段と理解していていても、嬉々として納付する人は少ない。最大の理由は自分の懐が痛むことであるが、税の使われ方がよく見えないことも不快感の理由である。かといって、その見ずらさ、わかりにくさに対してのクレーム、改善要望は、日本ではそれほど強くない。
以前から感じているが、背景として、日本での納税者の権利意識の薄弱さに起因することを挙げたい。日本では、源泉徴収と年末調整で納税手続きが大半である。これでは、納税者としての意識は高まらない。一方、米国では原則全ての人に確定申告が義務付けられる。会計士にアウトソースする場合も多々あるが、制度としては大違いで、その制度が納税者の義務と権利への意識を高めていることは評価できる。
なぜ、日本もそうしないのか?最近は、ネットの発達によってこの辺りの話題、即ち確定申告のメリットに関する情報収集が容易になってきたこともあって、医療費控除、ふるさと納税といった取り戻すための確定申告は増えていると推察する。また、eTaxも後押ししている。
いい機会だ。それならば、いっそのこと、皆確定申告制にすればいい。皆保険、マイナンバーという基盤がある国である。できないことは無い。
そのためには情報管理に関する国、当局との信頼関係が前提とはなるが、確定申告によるメリットは測り知れない。税の捕捉率改善は国家予算に寄与し、国民への分配も増える。そのマクロ効果が認識されれば、国民は喜んで皆確定申告に賛同し、流れは変わる。当局の立場でも得策となる。納税データの把握、活用によって、より精緻な分析が可能となって、有効で高度な政策立案が可能になる。同時に、納税者に対して情報を還元すれば、税体系への理解と申告、納付のヒストリーを通じて、賢い納税者への成長を促せる。
そして、全般のリテラシーの向上の背景に、国や当局と納税者のフェアな緊張感が醸成されれば、データ活用、効率的でセキュアなプロセス構築を通じで遅れている日本全体のDX推進の起爆剤になる。ICT利用と日本の高い民度から推測すれば事務的なハードルは高くない。むしろ、成長期の日本を謳歌した守旧派年寄りやその後継者たちの頭の硬さが問題。買われなかった年寄りが第一線から退きつつある今こそが、絶好の機会に違いない。