”さん”付けこそ、世界に誇りたい

他の人を呼ぶ時に、さまざまなバリエーションがある。英語圏であれば、ファーストネームが主流で、敬称としてラストネームの前にミスター、ミセス、ミズ、時にドクター等々をつけるだけなので比較的わかり易い。ヨーロッパ系言語圏も似たようなものである。中国語圏のことは在住経験がないのでよくわからないが、機内映画の中国語字幕を読んだり、知り合いからのメールを見る限り、先生が一般的な敬称であるようだ。日本での「様」「さん」に近い印象だ。

それに比較すると、日本には、さまざまな呼称が存在する。ファーストネームの呼び捨ては、主に年下の家族、親族向け。ラストネームの呼び捨ては、主に同級生。組織内では、社長、部長、課長、その他に特任部長だの担当部長だの、マネージャー、主任、チーフ、顧問、、、、、多すぎてわけがわからない。医師、士業、教員なんかは先生。飲食店に行けば、マスター、親方、ご主人、大将、、、僕自身もユーザの立場だと「様」、日本での親しい友人間では「中嶋」「ジーマ」「ナカジー」と呼び捨て、外国の中からは「HIRO」、コンサル先では「先生」、ボランティアで少年サッカーの世話をした時は「監督」、取引先からは「社長」、昔から付き合いのある学校や会社の先輩からは「クン」、わけ分からん。

日本には、「さん」という万能の呼称が存在する。年齢も役職もLGBTも気にせずに使える実に便利な言葉。働き方改革だの、グローバル化だのいう以前に、出来るかぎり「さん」付けで呼び合う文化となることが必要だ。「先生」だの「OO長」だの「クン」だの、会話の前段から、フラットでない状況を作っては、議論は活性化しない。以前のブログで書いた「席順」とも根っこは同じ。日本に来た来訪者には理解もつかいこなしも無理に決まっている。日本から海外に行けば、仕事でも仕事以外でも、ファーストネーム呼び捨て、もしくは、呼称+ラストネームで済んでしまうことに比較するとなんとも複雑。そして、「さん」で呼ぶと、不機嫌になる「先生」方がいまだに多いのだから、実にタチの悪い伝統である。教員同士、医師同士、弁護士同士が、先生と呼び合う様は、聞いていて気持ちが悪くなる。

現在のアメリカにおいては、日本と馴染みのある人たちは「さん」付けを使うことが増えてきた。「オオタニサン」はその一助になっているが、その公平性、利便性、平易な発音やスペリングという、言語としての合理性が受け入れられてきているに違いない。ファーストネーム、ラストネームいずれにも「san」をつけて違和感はない。「Dennis san」「Rawson san」。多少の距離感の違いを醸し出すこともできる。是非、「さん」付けが、世界に広まることを願っている。日本文化の奥深さ、聡明さ、謙虚さを理解してもらういい方法である。

次回は、僕が嫌いな「クン」付けについて、書かせてもらいます。